空耳此方-ソラミミコナタ-

煙去る


ことは、誰しもが眠りに落ちた頃に始まった。




ジリリリリリリ!!




深夜の最中
花守荘にけたたましいベルが響き渡る。


「あー…うっせぇっ!!」
炯斗が跳ね起きると、花守荘は慌ただしい空気に包まれていた。

なんだか息苦しい。

廊下に出てみると、丁度朋恵が走って来ていた。

「なぁ!何の騒ぎだよ?」

「上の階で火事よ!!さっさと外に出て!」

「嘘だろ!」

言いながら炯斗にもわかっていた。
朋恵の必死の形相が物語っている。
責任感からか、朋恵は事態を叫んで回っているようだった。

上につながる階段を見ると、真っ白い煙がこの階にも降りてきていた。

朋恵に他の客を任せ、炯斗は隣のドアを叩いた。


「ことのん!!恵ちゃん!!」

二人はすぐに出てきた。三人は階段を駆け下り、エントランスから外へ出た。

正面には宿泊客と従業員で約30人程が集まっていた。

しばらくたって、朋恵と友人らしき女性が出てきた。

「もう中にいないと思うけど!」


< 148 / 374 >

この作品をシェア

pagetop