空耳此方-ソラミミコナタ-
煙去る
ことは、誰しもが眠りに落ちた頃に始まった。
ジリリリリリリ!!
深夜の最中
花守荘にけたたましいベルが響き渡る。
「あー…うっせぇっ!!」
炯斗が跳ね起きると、花守荘は慌ただしい空気に包まれていた。
なんだか息苦しい。
廊下に出てみると、丁度朋恵が走って来ていた。
「なぁ!何の騒ぎだよ?」
「上の階で火事よ!!さっさと外に出て!」
「嘘だろ!」
言いながら炯斗にもわかっていた。
朋恵の必死の形相が物語っている。
責任感からか、朋恵は事態を叫んで回っているようだった。
上につながる階段を見ると、真っ白い煙がこの階にも降りてきていた。
朋恵に他の客を任せ、炯斗は隣のドアを叩いた。
「ことのん!!恵ちゃん!!」
二人はすぐに出てきた。三人は階段を駆け下り、エントランスから外へ出た。
正面には宿泊客と従業員で約30人程が集まっていた。
しばらくたって、朋恵と友人らしき女性が出てきた。
「もう中にいないと思うけど!」