空耳此方-ソラミミコナタ-
そこへ地元の消防団が到着し消火活動を始めた。
火は赤々と花守荘を舐めていく。
左側の方が火の手が強い。出火はそこからだろうか。
外に出ているのに熱気はここまで手を伸ばす。
そばで炯斗がしきりに首を伸ばして辺りを見渡している。
「どうかしましたか?」
「いや……克己さんが…やっぱそうだ!ここにいない!」
「嘘!?」
見間違いということもある。
三人は手分けして克己を探した。しかし成果はない。
「いたか!?」
「見つからない!」
言乃を見れば力なく首を横に振った。
「そんなまさか――」
同時に赤く染まる洋館を振り返った。
燃え上がる左側。確か克己の部屋は――
「クソッ!!」
「炯斗くん!?」
炯斗は館の左側の山に入る。
花守荘は山の斜面に建っている。
山を登れば二階の窓の高さにまで行ける。
そうすれば中に――
木の合間に目的の場所が見えた時だった。
炯斗は首根っこを掴まれた。
「ぐっ!!」