空耳此方-ソラミミコナタ-
透は地面に尻餅をついていた。
「おじいちゃん!?どうしたの?」
恵の声は下がらない。
無理もない。
地べたに落ちた透ははしたなく口を開き、手足はけいれんを起こしたかのようにガタガタと震えている。
しかし一番異様なのは彼の目だった。
口と同じように大きく見開かれ、揺れる目は都会のそれよりも暗い空を映していた。
いくら呼びかけても虚ろで側の子どもたちに向かない。
「おじいちゃん?」
「透さん?どうしたんだよ?」
肩を叩いてみても変化はない。
これではまるで何かに取り憑かれたようで――
「ちょっと退いて下さい」
炯斗の背中に言乃の声がかかった。
こういうのは慣れている人間がいい。
場所をすぐさま言乃にあけ渡した。
言乃は何をするでもなく、突然透の横っ面をはたいた。
恵が小さく悲鳴を上げる。
だが丁度かぶせるように透がうめき声を上げた。
「おじいちゃん!」
恵は安堵に胸を撫で下ろした。