空耳此方-ソラミミコナタ-
「あ、あぁ…」
息を吐き出す。
そしてゆっくり恵に顔を向けた。
恵は涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「大丈夫?」
「体は……なんともない」
「じゃあ…何で倒れたんだ?」
透は再度空に目を向ける。
「腰を……抜かしてしまった…」
「空見て?」
炯斗たちも空に目を向ける。
田舎島に似つかわしくない太いコードが四本と火事の煙が揺らめき去っていくだけだ。
特に気になるものはない。
「あそこに…」
透は震える手を上げコードの中央を指差す。
「あそこに……とが…」
声もかすれて聞き取りにくい。三人は透に耳を近づけた。
「あそこに…人…人が………」
続く言葉は、三人が幽霊に誘われてこの島に来ていなければ――到底信じることは出来なかっただろう。
それだけに―――それは現実離れしていた。