空耳此方-ソラミミコナタ-
沈黙、そして覚醒
朝焼けの中、炯斗は一人外へ出た。
「ねみぃ」
昨夜はほとんど眠ることが出来なかった。
花守荘の火事は大事には至らなかったが、念のためと言って宿泊客はめいめい島民に宿を借りることになった。
炯斗たちが間借りしたのは、透を介抱してる成り行きで、彼が昼間お世話になっていたオバサンの家だった。
陰る。
見上げれば、厚く重苦しい雲が光を覆い隠す。
だが炯斗の胸の内はそれ以上に暗い雲が立ち込めていた。
克己は見つかっていない。
かなり夜更けまで探したが成果は上がらなかった。
まだ探してない箇所は大量にある。
花守荘からは何も出てきていない。
大丈夫だ。
そう言い聞かせても光が差すことはなかった。
握る手はいつまでも震えが止まらない。