空耳此方-ソラミミコナタ-
――どうしよう
最悪の考えだけが頭を巡り離れることがない。
もしかしたら、克己はもう―――
ダメだ!!
炯斗はぎゅっと目を閉じた。
支配されるな。考えるな。流されるな。
思い切って目を開いた。
ひらり
「?」
何かが、目の前を過る。
長い糸の端が銀に煌めき、尾を引いて過ぎ去って行った。
「…なんだ……?」
前にも、こんなことがあったような気がする。
………思い出せねぇや………
首を捻るとゴキゴキ鳴る。
痛みに顔をしかめつつ、炯斗は動きが見え始めた家の中へと入って行った。