空耳此方-ソラミミコナタ-
朝食の後、三人は透がへたりこんでいたところに来ていた。
「ここに何かあるの?」
昨夜の透と同じく空を凝視する炯斗を見上げて尋ねる。
「…ここに何かある気がしたんだよ」
空を見つめたまま、炯斗が言うと恵は脱力する。
この場へは炯斗の提案で来たのだ。
炯斗は一度目を閉じて、今度はまた、ゆっくりと開いていく。
「!?」
炯斗は目を見開いた。
そのままゆらりと、よろけるように炯斗が足を踏み出す。
「ちょっと!何処行くの?」
炯斗を止めようと伸ばした手が、後ろのから軽く抑えられた。
「ことのん……」
【わかりませんが、何か考えでもあるのでしょう】
ついていってみましょう、と言乃が微笑むと、心配そうに炯斗を見つめてから恵も頷いた。
そして、炯斗が道から山に入って暫く――
立ち入り禁止の札の立つ谷にたどり着いた。
そこで予感の正否が目の前に広がっていた。