空耳此方-ソラミミコナタ-
「──なるほど、ね…」
朋恵は顔をしかめながらもう一度下を見下ろした。
克己を見つけた三人は、すぐさま透と朋恵を呼びに走った。
そして、克己の行方が気になり偶然見つけたという風に事情を説明した。
恵はショックで泣き出し、炯斗は押し黙っている。
透は呆然と谷底を見つめ、友の変わり果てた様子を受け入れられないでいた。
朋恵は手を合わせてから、三人に向き直った。
「可哀想だけれど、今の私たちには彼を引き上げることはで出来ない。火事の件も含めてもうすぐ警察が到着するから、そっちに頼みましょう」
三人は重くうなずいた。
今の自分たちには何もすることは出来ないのだ。
その無力感が大いにのしかかる。
炯斗はうつむき、谷底が見えない位置まで下がってしゃがみこんだ。
「炯斗くん、一つ聞いていいですか?」
言乃の声が降る。炯斗は顔を上げない。
それを肯定ととり、言乃は言葉を続けた。
「どうして……ここがわかったんですか?」
炯斗は黙ったままだ。
「答えてください。重要なことかもしれないんです」
炯斗の身体がビクリと揺れた。
言乃は語気を強める。
「お願いです、答えてください!!」
「…光が……ここに伸びてた」
炯斗がポツリと言う。
「透さんがいたあの場から…いや、空にずっと光の筋があったんだ………わかんねえけど、何かあるかも知れないと思って……来て…みたら…」