空耳此方-ソラミミコナタ-
その先の言葉小さな嗚咽に飲み込まれた。
言乃ははっとして、手を口元に持っていく。
「……炯斗くん…それは…」
炯斗は顔を上げた。
苦しげにゆがめられた目に言乃を映す。
嗚咽でかすれた声が言乃に向けられる。
「なぁ…ことのんにもこんなん見えるのか…?」
「……いいえ、見えません」
「そ、か…」
炯斗はまた腕の中に顔をうずめた。
言乃は何かを言おうとした。しかし、何をどういえばいいのかわからず、開きかけた口をそのまま閉じた。
~♪~♪
誰かの携帯の無機質な音楽が流れた。
朋恵はさっと出して電話に出る。
「はい、冬沢。……わかった。ええ、そう…あと、悪いけど人員増やして。こっちで新たに問題が発生したの。え?…そう」
電話の相手が詳しい説明を求めたのか。朋恵はなるべく淡々と状況をつたえる。
相手の返事を得ると、電話を切って呆然としている皆に言った。
「一旦、全員で花守荘に戻るわよ。ここでこうボーッとしてても何にもないわ」
泣いている恵の肩を抱くようにして踵を返すと、朋恵はさっさとその場を離れた。
のろのろした動きで透も柵から離れ、朋恵の後を追い、二人が残された。