空耳此方-ソラミミコナタ-
朋恵は鼻息荒く彼らのいなくなったロビーを一瞥した。
「全く…あんなんだから警察が無能だなんて言われるのよ」
朋恵は四人を睨むように視線を戻した。
ひっと身を寄せ合う四人。
「とにかく!鹿沢克己について聞きたいからついてきてくんない?」
沸点を超えて丁寧ささえをもかなぐり捨てた。
ギ、と睨まれた透は慌てて立ち上がり、大股で進む朋恵の後を追った。
朋恵の足音が消え去り、炯斗は身体の力を抜いた。
ソファに全体重を預け、天井を仰いだ。
「ともちー怖えぇ…」
「そりゃそうですよ。なんてたって彼女は『氷の女』ですからね」
「へぇー……ってうぉわッ!?」
炯斗は飛び跳ねるように身体を起こし振り向くと、見知らぬ天パーが目に入った。
「やあ、どうも」
その若い男はコンビニで売ってるカップのコーヒー片手ににこやかに手を上げる。
「だ、誰だアンタ!!」
見知らぬ天パーは炯斗たちの前に回り、さっきまで朋恵が座っていた場所に腰を下ろした。
「初めまして、僕は高橋光樹(たかはし こうき)。刑事をしてるよ」