空耳此方-ソラミミコナタ-
「一応この現場の責任者なんだー」
そういって高橋は笑う。
高橋光樹。
はっきり言って見た目は炯斗たちとそうは変わらなさそうな童顔だ。
短い天然パーマの黒髪。
丸みを帯びて童顔を象徴する目は、黒縁の眼鏡を携えている。
その目からだいぶ上のほうについた短い眉毛。
ぱりっとした清潔そうなスーツの胸ポケットには使いこまれた手帳とペンがささっている。
その顔でへらりと笑われると、なんだか空気が和む。
高橋は、手にしてたコーヒーを三人との間に横たわるテーブルの上に追いた。
「!!」
コーヒーを見て炯斗の目が飛び出さんばかりに見開かれた。
「どうしたの?」
コーヒーを凝視したまま恵の言葉も耳をすり抜ける。
カップの側面に見えるロゴ。
あむぁーい
「…ちょっと、ソレ見せて…」
「? いいよ?」
高橋の怪訝そうな目をよそに炯斗はコーヒーを手に取った。
何度見ても変わらないそのロゴ。
そこにはしっかりと書いてあった。
《あむぁーいチョコーヒー》
「……」
炯斗は引きつった顔。
脳が文字を認識した途端に、記憶が1ヶ月ほど前に遡った。