空耳此方-ソラミミコナタ-
「あー!すっきりした」
炯斗が晴れ晴れというのと対照的に高橋は肩を落とした。
「あーあ…アレおいしかったのに」
「あ!やっぱりですか?私も好きです、チョコーヒー」
無念そうな高橋に恵が明るく言うと、炯斗はフンと鼻をならす。
そんな炯斗を恵は軽く睨んだ。
「嫌いなのはわかるけど、いきなり捨てることないじゃない!」
「嫌いかどうかなんて知らねーよ、飲んだことないし」
「じゃあ何で捨てたのよ」
「嫌なこと思い出したからだよ!!」
「何よそれ!」
恵は立ち上がる。それにあわせて炯斗も立ち上がった。
目を吊り上げた二人の間にはバチバチという光が見えた気がした。
「だからって捨てていいわけじゃないじゃん!」
「衝動的だったの!俺の意思じゃない!」
「スッキリしたって言ったじゃん!」
「忘れな!」
突然の衝突においていかれた言乃は自販機で買ったお茶をすすり、高橋は面白いものを見つけたという顔で手帳を開いていた。
その合間にも恵と炯斗はヒートアップしていく。