空耳此方-ソラミミコナタ-

「空からって言うか飛んで来たりしない限りはあんなことには……」

「…人が空を歩いた…」

「え?」

恵がボソッというと高橋は首を傾げる。
恵は一人何かを閃いて、炯斗と言乃を見た。

「おじいちゃんが言ってたじゃない! 人が空を歩くのを見たって!!」

「あ…ああ!! そうだ、確かに言ってたよな! それに、あの場所から辿って俺たちは克己さんを見つけたんだ!」

「「辿って?」」

炯斗は慌てて口をつぐんだ。
光のことはまだ言乃にしか話していない。

「いや…何でもないって…」

後で話すから、と恵に目配せする。
隣の言乃から来る視線が痛い。
こんな痛い視線、ナンパ以来だ。

高橋は腑に落ちない顔をしたが、頭を振って仕事モードに戻る。

「君たちには独自の調査方法があるってことか……まぁ協力してくれるのは有難いけど……」

こっちに任せて欲しいなぁ…

後半を語る視線から逃げるように三者三様に顔をふいと背けた。

子供ってヒドイ。



小さく息をついて高橋は立ち上がった。

「今聞き出せるのはこのくらいかな。協力感謝するよ」

「いえ」

「また何か気づいたら教えてよ」

高橋は名刺の裏にさらりと携帯の番号を書いて寄越した。

「じゃあね」

そして先ほど朋恵が消えた方に歩いていく。


高橋の背中を見送って、炯斗は立ち上がった。



「よし! 俺たちも行くか!」
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