空耳此方-ソラミミコナタ-
「アリバイを聞き込みで証明しようっての? つくづく人の言うこと聞かないわね?」
「へへ。じいちゃんのこと証明したら手引くからさ、な?」
「………」
朋恵は腕組みして唸った。
相手は一般人なのに…
「いいんじゃないの?少しくらい許してあげなよ朋恵」
その声は階段から降ってきた。
軽快に段を弾いて、三人の前に降り立つ女性。
「郁美!!」
ニカッと歯を見せて笑いながら、つかつか歩み寄ってきた。
炯斗はその女性にさっと近寄る。
「うわぁ、お姉さんともちーの友達? 俺さ日奈山炯斗っての。よろしく!」
「あら、よろしく。私は成瀬郁美(なるせ いくみ)、朋恵とは高校の同輩よ」
飛んできた炯斗をさらりと流す郁美。
目を輝かせる炯斗とさっさと打ち解けて握手なんかしている。
幸せそうに繋いだ手をブンブン振り回す炯斗から目線を外し、朋恵を見た。
「ざっと中を見てきたけど、三階の右側と二階、一階の全域は無事よ。これならお客さん皆戻れるんじゃない?」
花守荘の被害を見てきたようだ。
この変な状況に頭を抱えながら朋恵は礼を言う。