空耳此方-ソラミミコナタ-
恵は人も車も少ない道を歩いていた。
勢いよく出てきたはいいものの……私、役に立てるのかな?
言乃は案外行動が早く、その背中はすぐに見失ってしまった。
来て2日の果飲島、行動範囲は限られている!
って思って洞窟に足を向けたところに炯斗からの電話。
どちらにせよ、そっちの方に行くことにして、今に至るということである。
幽霊なんてものに立ち向かう力なんてないし、そもそも見えもしない。
ついて行ったところで何が出来るのだろうか?
視界が一気に開け、砂浜に出た。
ここは気持ち良いんだ…
砂浜に座り込み、海を見つめる。
ことのんたちに依頼なんてするんじゃなかった…
……そしたら二人が事件に巻き込まれることもなかったのに…
……私の責任だ……
水は何事も語らずに飛沫を上げるばかり。
ザァ…と鳴くだけだ。
それに何か違う音が混じった。
「何?」
恵は立ち上がって辺りを見渡し、洞窟の方へ近づいて行った。