空耳此方-ソラミミコナタ-
何だろう……………怖い
動物でもいるの?
だが、音が聞こえてくるのはあの暗号のある洞窟だ。
恵は不安になって体を岩壁にピッタリとつけてじりじりと入り口ににじり寄る。
音は規則的ではない。
動物が壁を叩いたりしてるのではなさそう。
首筋を冷たい汗が伝う。
恵はその場に落ちていた石を拾い上げた。
これでおどかせば、何とかなるよね…
入り口の側までやって来た。
背中を壁につけて一度深呼吸をする。
音の合間に息遣いが入った。
人がいる!!
恵の汗が一気に失せ、石を持つ手が震える。
その息に入り込む声は男のもの。
恵は意を決して、中から見られないように石を投げた。
石は入り口付近の内壁に辺りガラゴト大きな音を立てる。
思ったより激しい音に身をすくめ、そろそろと中を覗いた。
途端、何かが中から飛び出した。
「きゃあ!」
人だ、男の人。
しかし驚いて身を縮めた恵にはそれしかわからなかった。
呼吸を落ち着け改めて洞窟を覗いた。
「!!」
目を見開き、駆け込んだ。
目の前に、倒れているのは――
「ことのん!!」