空耳此方-ソラミミコナタ-
言乃にかけ寄り、彼女の口元に手をやる。

大丈夫、息はある!

「ことのん、ことのん!! 大丈夫!?」

頬を数回叩くと、薄目を開けた。
恵はさらに言乃に声をかける。

「ことのん! 私…恵だよ! わかる?」

今度はしっかりと目を開けた。
しかし、体を起こした途端に咳き込んでしまった。

思わず、言乃を支える手に力が入る。
もうすでに恵は泣きそうになっていた。

どうしよう……!!

すると、言乃が恵の肩を叩いた。

「?」

大丈夫ですから


口の動きだけでそう語ると、言乃はまた気を失ってしまった。


「ことのん!!」

「どうした!? 何かあったか?」

洞窟の入り口から、透が顔を覗かせていた。

「おじいちゃん!」

はたと立ち止まって見つめる透が酷く救いの手に見えた。

すぐさまその手にすがり付き叫んだ。


「ことのんが、倒れちゃったの! どうしよう!」

「わかったから落ち着け! とにかくここから運んで寝かせてやろう。な?」

小さな子供のようにコクコクと頷く。
透は優しく恵の手を握ると、奥の荷物をまとめに入った。


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