空耳此方-ソラミミコナタ-


羽田は、食堂の手前に位置するスタッフのみが立ち入り出来る部屋にいた。

郁美は一般客の仮宿を聞くと、安全を伝えるために電話を使いに行った。

「頑張りなよ」

「!」

すれ違い様に炯斗に郁美がささやいた。
大体の事情を察してくれたようで、炯斗は郁美への有難い思いが溢れるのを感じた。




朋恵が身分をあかし、部屋に入る。炯斗もそれにさりげなく続いた。
二人の話が聞こえる位置を陣取り、背を向ける。

朋恵はそれを確認すると、戸惑う羽田に質問を開始した。

まずは、当たり前だが昨夜のことだ。
すると羽田は意外にも考えこみながら答えた。


「ううん……昨夜は林田さんに持ってきて貰った備品の整理で忙しかったからな。
この部屋に戻ってきた時にはもう日付が変わってましたよ。火事は寝付いてすぐでしたね」

俺たちの時とは大分対応が違うじゃん。ともちーが綺麗だからか刑事だからか…

そんな馬鹿なことを考えていると、朋恵はすでに次の問題に移っていた。

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