空耳此方-ソラミミコナタ-

「備品の整理って、明るいうちにやらなかったんですか?」

朋恵の問いに、羽田は苦笑を浮かべた。

「その時間は、各部屋の掃除にシーツやタオルの交換なり、それらの洗濯とやることがいっぱいあるんですよ」

「オーナー自らやるんですか?」

二人は目を見開いた。
羽田は少しだけ、嬉しそうに頭をかく。

「何分経営が難しくて、人件費を出来る限り抑えるようにしなきゃならないので。
そんなんだからこのホテルの従業員は私を含め十人程度しかいないんです」

「なるほど。ちなみにその備品とは何処に?」

「中庭の端にある倉庫です。消耗品以外はほとんどそこにあります」

朋恵はメモを取りつつ質問を続ける。

「あなたがこの部屋に戻ってきたことを証明出来る人はいますか?」

やはりきたか、そんなやや疲れた顔で羽田は息を吐いた。

「いません。皆には先に帰って貰うか、休んでもらいました」



大体聞くことは聞いただろうか?
炯斗は朋恵を振り返った。

朋恵も最後の質問の入るところのようだ。

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