空耳此方-ソラミミコナタ-
「このこと、朋恵さんには?」
『まだ。番号知らなくてさ』
炯斗の心底残念そうな声に、高橋はほっと息を吐いた。
とりあえず、現場には僕たちが先につけるだろう。
非番の朋恵さんが先に着いていただなんてことになったら、また大目玉を食らいかねない。
「わかった。
朋恵さんには僕から連絡しておくよ。君たちは、鑑識が来たら詳しく説明してあげてくれないかな?僕も連絡したらすぐ行く」
『わかった! 待ってればいいんだな』
高橋は軽く返事を返して電話を切った。
そのまま電話帳から担当の番号を呼び出し、事情を説明する。
と、向こうから大きな歓声が聞こえてきて、思わず携帯を耳から遠ざけた。
『宛てのない探し物に飽き飽きしてたところですよ! すぐ向かいます!』
「あ…ありがとう。頼みます」
気合いの入りように苦笑しつつ電話を切る。
後は、朋恵のみ。
高橋は携帯を見つめ、ため息をついた。
報告しなきゃ…いけないんだよな
このヤマ、出来れば一人でやりたいんだけど
進まないが発信を押す。
「………あれ」
かからない。お話し中である。
「……ま、いっか」
なんとも軽い調子で高橋は手帳と携帯をしまいこみ、ロープウェイの駅へ向かった。