空耳此方-ソラミミコナタ-
運動神経もよし、頭は……何も言わないでおこう。

とにかく外に出ること、レジャーが大好きで、目の前に自然が広がっていれば入らずにはいられない。

時には一日行方不明になってたかと思うと、タヌキを手懐けて、翌日の昼にひょっこりと戻って来た――なんて伝説ももつ。

それが透である。


本当は透の体が特別製なのだが、そんなことを克己は知りもせず。

ただ透を見て首を傾げるばかり。成長すればああなれると思っている。
真実を知って肩を落とす日は近い。


「じゃあ、どうする?」

「ここ探検しようよ!」

「よっしゃ! 行くぞ!!」

玲子が一人うげ、として顔をしかめる。
都合よく見なかったことにして、男たちは元気に歩き出す。

後ろで玲子は小さくため息をついた。

「全く、どっちもどっち。まだまだ子どもなんだから」

クスリと笑って、小走りに二人を追いかけた。


「ここから山に入れるよ!」

「よし! 行くぞ!」

その瞬間、反対しなかったことを最高に後悔した玲子だった。

「…私はか弱い女の子だってこと忘れてるわね…」

「知ーらない!」

「コラ、透!! 聞こえてる!」

透がへへ、と無邪気に笑う。
玲子はやれやれと肩をすくめて重い足を大きく踏み出した。


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