空耳此方-ソラミミコナタ-
足場は悪い。
枝だ草だが積極的に足を奪い、皮膚に当たって痒い。

道があるのにわざわざ外れて行く二人を見て玲子は唖然とした。

「何してるの!?」

そう言えば透が、お前こそなんだよ、とした顔で振り返る。

「こっちのが面白そうだろ」

「いやいやいや!! 全く! 寧ろ危険そうじゃない!」

「大丈夫だよ、玲子姉ちゃん………はい」

玲子は克己が差し出した手をきょとんと見つめた。
動かない玲子に、克己も心配そうな顔をする。

「姉ちゃん?」

「ううん、ありがとう」

ニコリと笑って手を取ると、克己は嬉しそうに頬を染めた。


「ホラ、さっさと行くぞ!」

透の不機嫌が飛んで来る。
二人は顔を見合せて肩をすくめた。


大股でずんずんと進んでく透の背中を追いかけようと足を持ち上げる。

ズルッ! ドタッ!!

転んだ。

玲子が下草に足をとられて、繋いだ克己は道連れに顔から茂みに突っ込んだ。


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