空耳此方-ソラミミコナタ-

「ハハッ! バーカ!」

「「うるさい!」」


一喝が重なって、透は耳に指を突っ込む。
団子状態から立ち上がった二人は顔を真っ赤に染めていた。

「さっさと行きたいんでしょ? 行くわよッ」

「……やけくそだなぁ…お前」

山に入ってたった数分。
二名は既に草まみれ。
半ば怒りを含みながら地面踏み締め、山を進んだ。





ポツン。

反対側に山を下りかけた時、葉が雨を奏でた。

一斉に見上げた瞬間、克己の鼻の頭にその楽器が跳ねた。

「マズイ、走れ!!」

透の言葉を聞くまでもなく、玲子と克己も走り出していた。

雨宿りの場所を探して、山を下って右へ左と折れ曲がる。

あの二人、ちゃんとついて来てるか――?

「透くん!!」

振り返った時、見えたのは玲子の青ざめた顔だった。

「前見て!!」

「え?」


軽い浮遊感の後、透の体は地面に叩きつけられた。
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