空耳此方-ソラミミコナタ-
玲子が息をのむ。
見上げると、顔が真っ青だ。
「そんな心配する程じゃないさ。ただの捻挫だ」
「歩ける?」
窺うように聞いてくる克己に透は笑って頭をポンと叩いた。
「ああ、俺の丈夫さは知ってるだろ?」
そう言って立ち上がり、おそるおそる左足に体重をかけてみる。
だがやはりズキッと痛みがくる。
「やっぱり痛いんじゃないか!」
克己が怒ったように言う。透は力なく笑うしかなかった。
「今日はもう帰れないわね。野宿出来るところでも探さないと」
すると克己がさっと身軽に立ち上がった。
「僕が行ってくるよ。あ、玲子姉ちゃんはそこにいて!」
「そうね。一人にしたら絶対に動くから」
「動くからって、動けるし!」
「こんな山道帰れないでしょ!」
透は身をすくめた。
頑張ればいけないことはない。
が、そんなことを言えばまた雷が落ちてくる。
「わかったよ。大人しくしてるから!」
「それでも私は見張ってるから」
「……信用のなさが悲しい…」