空耳此方-ソラミミコナタ-
「それにだ。『玲子さんは克己さんが殺したも同然』ってどういう意味だ?」
「……」
「言えよ。……言ってくれよ! じゃないと、克己さんが何も報われねぇ!!」
透は炯斗をじっと見つめた。
何故……この小僧はこんなに必死に踏み込んでくるのだろうか?
何の関係もないはずなのに。
何故こんなにも苦しそうに、自らも傷つきながら……
「……あの騒動の後に玲子の心臓に病が見つかったのだ。
昔から体が強い方ではなかったが、あの日はキミが代わりのように倒れ、本人はピンピンしとった。
しかし、帰ってすぐだ。
倒れたというのを勤め先に親からの手紙で聞いた。
恐らくは、そのせいで克己を会えなかったのだろう」
透は一息つき、お茶のプルタブを開けた。
すっかり冷めたお茶を一口煽り、続ける。
「玲子の家は金持ちだった。
この島の大部分の土地を所有しとって、その関係もあって当時の私らは、ここへ来たのだ。
しかしな……玲子が倒れて程なく、父親が経営していた会社が倒産、両親は離婚。
治療が必要だった玲子は母に引き取られた」
玲子にとっては、まさに踏んだり蹴ったりだった。
会社の重荷を背負わせまいと離婚した両親。
己の介護とショックが相まって衰えていく母親。
責任感の強い彼女のことだ。自分を責めたに違いない。