空耳此方-ソラミミコナタ-
そんな時に、私が側にいてやれば……
島の騒動で会わせる顔がないなどと言ってないで、すぐに彼女の元へ行っていれば……
後悔は止むことがない。
透は顎を撫でて、話を続けた。
「思い出の場所はもう私らのものではない。
あの場所に集まることは夢物語と化した。
そう思っていた。
だが、克己は諦めなかった。あいつは島を取り戻すべく立ち上がったのだ」
「立ち上がったって……?」
炯斗は恐る恐る聞いた。
夜が更ける。
声は自然と低くなっていく。
透はソファに預けていた上半身を前に傾ける。
「中卒で働きに出ていた克己はな、そこで才能を発揮し……いつの間にか建設会社の社長、さらにそこから国会議員にまでなっていた」
俯き、透は自嘲気味に笑った。
「それ全てが玲子の為だったかどうかは知らん。
既にキミと一緒になった後だったが、そこで完全に負けたと思ったよ。
克己はいくつかの仕事をこなして議員としての地位を築くと、すぐさま行動を開始した」