空耳此方-ソラミミコナタ-
「行動って…」
「言わんでもわかるだろう? この島を買いとったんだ」
「マジで!?」
炯斗が素っ頓狂な声を上げると、透はゆっくり頷いた。
「事実だ。ゴミ処理場を作ると理由をつけてな」
「そんなん、島の人達に反対されねぇの?」
「もちろんされたさ。それが最初っから目に見えてるからな。奴は別方面から攻め落としたのだ」
「別…方面?」
「おう。アイツは頭のいいことしたぞ?」
喉を大きく鳴らしてお茶を煽ると、にやりと笑って見せた。
つられて炯斗も大きく身を乗り出した。
「まずな、本土の海沿いの開いていたいい土地に作ろうと言い出した。
するとそこはいい土地だからな、他の企業やらショッピングセンターやらが狙ってる上に、住民から苦情が出た。
無論、議員の力があるとはいえそんな所にゴミ処理場を建てられる訳がない。
そしてしばらくその土地を巡って自治会や企業と争ってから、ある時コロッと主張を変えた」
そこで炯斗もピンと来た。
「果飲島に建てるって言い出したのか!」
炯斗が言うと、透は相変わらずのニヤニヤ顔で頷いた。
「大多数の人間が賛成した。どうぞその辺鄙な島にしてくれとな。
周りの奴らは克己が譲歩したと思ってるんだろうが、奴の狙いはもともと島だ。
こうして克己はまんまと島を手に入れた、そう思われた」
「……そこで、邪魔が入ったんだな」
「そうだ」
透はもう笑ってはいなかった。
炯斗は、ゴクリと唾を飲み込む。
透は残りのお茶を一気に飲み干すと、タンと音を立てて缶をテーブルに衝いた。