空耳此方-ソラミミコナタ-
「果飲島の土地を持つ権利者。そいつが頑として首を縦に振らなかった」
「その権利者が……玲子さんってか?」
「その通りだ」
なんて因果だ。求めるものは同じながら、敵対してしまうとは。
炯斗は震える手でコーヒーを一口すするが、何の味もしなかった。
「玲子の父親の執念だ。
一人娘の大切な場所をどうにか取り戻し、会社のものにして社長の任を降りた。
その後に事情を知る新たな社長が、その権利を玲子に引き渡したらしい。
離婚により玲子の名字は変わっていた。そのことに、克己は気づかなかったらしい」
「そんな……!」
「今にして思えば、克己も忙しい身だった。権利の話など、書類の上でしか認知していなかったのだろうな」
でなければ、克己が玲子に気づかないはずがない。
透の表情が、そう物語っていた。
しかし、たとえそうだとしても疑問が残る。
「玲子さんの方は克己さんに気付かなかったっていうのか!?」
「詳しいことはわからん。玲子の母親が亡くなった後、あいつとの連絡は年賀状くらいのものだったからな」
「……」
そうだとしたら、妙な話だ。
友の暴走を止めもしないだなんて……
炯斗が首を捻るなか、透は話を進めた。