空耳此方-ソラミミコナタ-
「……結果的にはそうかもしれない……けど、克己さんは…純粋に戻りたかっただけだと思うぜ…」
「……知ったことか」
透は吐き捨てるように言った。
炯斗は空き缶を捨て、俯く透の後頭部を見つめる。
「じいちゃんだって…わかってんだろ? 克己さんはそんなことする人じゃない」
「………」
透の表情は一切見えない。
ソファに座る彼が、急に年相応の老人になった気がした。
「……悪い。色々教えてくれてありがとな」
炯斗はその場に背を向けた。
本当に悪いことをしたと思う。
辛いことであり、信じたくはない。
だが――
そんなもん、じいちゃんのが何倍もわかってる筈だ。俺が言うことじゃない。
階段を上ろうとして、降りてきた人に気付いた。
「ことのん、恵!!」
恵の顔色はまだ悪い。
だが大分良さそうで、言乃に手を借りているが、しっかりとしていた。
言乃がすっと微笑んだ。
「もう食事だそうです。炯斗くんも行きませんか?」
「おう!!」
こんな話の後でしみじみと思う。
ああ……和むなぁ…こいつら