空耳此方-ソラミミコナタ-
「え、俺?」
「そうアンタよ。ちょっと顔かしてくれる」
「えー何なに? 愛の告白? うわ楽しみ──あだっ!」
笑顔で立ち上がりかけた炯斗の足に刺さる。朋恵のヒールが。
「痛い痛い! だからそれ凶器だって、マジやめてお願いします!」
「……それでよろしい。さっさと来なさい」
炯斗は立ち上がり、言乃を見た。
本来ならこのあと羽田のところへ行くはず。
しかし──朋恵に呼び出されたとなればそれは出来ないかもしれない。
心配そうに見上げる恵の隣で、言乃は携帯にすばやく打ち込み、炯斗に見せる。
【大丈夫です。羽田さんのところには私と恵ちゃんで行きます。炯斗くんはよくお話を聞いてきてください】
「さんきゅ」
ニコリと微笑んで朋恵の後に続く炯斗を見送る言乃に、恵は不思議そうな視線を投げる。
それに気付きながら、意味深に微笑む言乃は食器を片付けて、恵を振り返った。
【さて、私たちも行きましょう!】
「う、うん! でもどこに?」