空耳此方-ソラミミコナタ-
炯斗は朋恵に彼女たちの部屋に、連れられた。
部屋は炯斗たちのそれと造りも同じ。
ま、そりゃそうか。同じ宿屋なんだし。
部屋に招きいれられると、中で座って待っていた郁美が手を上げて声をかける。
「やっほー、炯斗くん」
「いくみん! って、いくみんがいるってことは告白じゃないのか…」
「何それ?」
郁美が不思議な目を朋恵に向けると、朋恵は大きくため息をついた。
「最初から違うって言ったでしょ。面倒だから黙っててくんないかな?」
「ちょっとくらい乗ってくれてもいいじゃんよー」
口を尖らせる炯斗と、それを睨む朋恵。
そんな二人をよそに郁美はごそごそと。
「嫌よ。お遊びに付き合う暇はないの」
「たまには肩の力抜こうぜっ!」
そして郁美は紙の束を取り出した。
「じゃあ二人とも本題に入るよー」
「いくみんもちょっとくらい突っ込んで!」
「えーと、朋恵が頼んだ調査が今朝──」
お構いなしに話し出す郁美に炯斗は完敗。
そこまでスルーか。
すごいぜいくみん。こんな強敵だとは思わなかったぜ。
と、その時涙を流す炯斗の頭を朋恵が叩いた。
「話聞いてる?」
「ごめん。聞いてなかった。っていうか、何で俺が呼び出されたの?」
固まる朋恵。それを穏やかな目で見る郁美。
「そこからか…。あんた、昨日高橋に変な頼みごとしたの覚えてる?」
頼みごと──
少しずつ記憶を手繰る。
なんだったっけ?
えーと……そうだ!!
「アズサさんのこと調べてくれって言ったんだ!」