空耳此方-ソラミミコナタ-

炯斗と朋恵が突っ込んだのと同じころ、言乃と恵はスタッフルームで羽田を見つけた。

「あ、羽田さん!」

「ん?」

「おはようございます!」

恵が明るく挨拶すると、羽田もにこやかに応じた。

「やあ、おはよう。よく眠れた?」

「あ…はい、まぁ…」

「ん?」

ここ最近大変な目に遭って、よく眠れたとは言い難い恵は曖昧に答える。
羽田の問いかけが走る前に、言乃が携帯をかざした。

【お話を聞かせて頂いてもよろしいですか?】

「あ、あぁ…いいよ」

やや驚いた顔で頷いて、テーブルを簡単に片付ける。

「じゃあ…座って。何か飲む? お茶? コーヒーのがいいかな?」

「あ、いえ。お構い無く」

羽田はカップに緑茶を注いで二人の前に置いた。
自分にはコーヒーを持って来て、二人の向かいの席に座った。

「で、何を聞きたいのかな?」

恵は言乃を見た。
言乃は小さく頷いて、携帯からメモ帳に持ち換え、ペンを走らせる。

【この花守荘、以前は美術館になる予定だったそうですね。何故このように宿になったのですか?】


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