空耳此方-ソラミミコナタ-
【高橋さん!】
二人が向いた先には、調査から戻ってエントランスをくぐる高橋がいた。
高橋は二人を見つけるや否や、顔をパッと輝かせて二人のところへ大股で歩いてくる。
「やったよ! 一つ解明されたよ!」
「本当ですか! 一体何です?」
朗報に恵の声が少し高くなる。
高橋はよく聞いてくれたというように大きく頷くと、堪えきれない笑みと共に言った。
「死体を谷に運んだトリックだ!!」
「なんだって?」
声が降ってきた先を見ると、炯斗が螺旋階段の上から顔を覗かせていた。
その後ろには朋恵と郁美もいる。
「あ…先輩」
高橋の含みを持った言い草に朋恵の眉が吊りあがる。
「何よ? 私がいたら悪いの?」
「いえ。何でもないです」
「嘘よ。後で言って驚かせたかったって顔に書いてあるわよ」
「ええっ!」
高橋は大きく口を開けて頬を押さえる。
と、それに朋恵も少し驚いた顔をした。
「…図星? 冗談のつもりだったのに」
「先輩、意地が悪いです」
「朋恵の勝ちだね。フフ」
高橋はがっくりと肩を落とした。
朋恵と郁美にかかれば、高橋も形無しだ。
この二人そろうと怖えな…
気をつけようと肝に銘じながら炯斗は、階段を降りて言乃たちに近づいた。
「うまく聞けた?」
「うん、首尾よくいったよ。そっちは?」
聞き返すと、炯斗は迷ってうーんと唸った。
「はっきりしませんね。どうしたんですか?」
「なんつーか。またも衝撃的事実ってやつかな」
「「はぁ…」」
「ため息つきたいのは俺もだって…」