空耳此方-ソラミミコナタ-
事実
「どうしたのよあの子ら」
「さあ? 朋恵なんかした?」
「何で私なのよ!?」
ぎょっとする朋恵に郁美はクス、と笑って先を行く高橋に続いた。
一行は食堂の銘々に水を持ってきたりして椅子に座る。
朋恵は足と腕を組んで、納得のいかない顔で隣の高橋を呼んだ。
「高橋」
「はい?」
「何で私たちより先にあの子たちなのよ?」
うわ、機嫌悪い。
それを聞かれると高橋は困ったように笑った。
「この件の手柄は、ほとんど彼らですから」
「それは否定できないわね」
一同が落ち着いたのを待ってから、高橋は口を開いた。
「鹿沢克己氏の死因は高所から落ちたことが原因でした。しかし、外傷が少ないため、比較的傾斜の緩い崖から落とされたのではないことが問題でした」
「どゆこと?」
一人事件から離れていて内容を把握仕切れていない郁美が首を傾げる。
「つまり死体は、空からまっすぐ落ちてきたということです」
「へ?!」
「僕たちも初めはそんな状態でしたよ。…日奈山くん、改めて御礼を言うよ。君のおかげで捜査は一気に進んだんだ」
そう炯斗に笑いかけると、当の本人はぎょっと驚いた。
「君が見つけてくれたあの紐。それが決め手になった」
「本当か!?」