空耳此方-ソラミミコナタ-
「あれから警察はロープウェイを徹底的に調べた。日奈山くんが見つけたのとは違う駅を調べたら、そこで見つけたよ。あの紐を同じものをね。
10m程度の紐はゴム製。伸びきって切れたらしくかなり細くなっていてね、断裂面は一致。さらに調べると鹿沢氏の皮膚の破片が付着しているのがみつかった」
「それって! ……どういうことだ?」
炯斗が言うと、そこにいた全員がずっこけた。
「ちょっと炯斗! わかったんじゃないの!?」
「い、いやぁ…わかった気になっちゃった」
高橋以外が呆れた目で彼を見る。
だが、彼がてへ、と頭をかくと一斉に逸らした。
コホン、と高橋は咳払いをして皆の注意を戻すと、話を続けた。
「彼の殺害方法がわかったってことです。
ホシはずいぶんと大胆な手を使いました。
まず、なんらかの方法で鹿沢氏をロープウェイの駅まで連れてきます。そして彼の意識を飛ばし、ゴム紐の中間あたりで鹿沢氏の体を縛り、そのゴム紐の両端をロープウェイのレールに結びつけました。
そのままロープウェイを作動させると、丁度谷の辺りでロープウェイは山の頂上に向かうものと谷の先に進むものと分かれます。
するとレールが離れるにつれてゴムはどんどん伸びていき、ついに耐えられなくなって千切れます。鹿沢氏の体は支えを失い、そのまま谷底へ────」
その結果を思い出してしまい、言乃は思わず口元を押さえた。
そんな言乃の肩に、炯斗はそっと手を回す。
しかしその手を恵がギュウとつねった。
「どさくさに紛れて何してんの」
「イッ!! 恵ちゃん痛いです!」
「そこ! うるさい」
朋恵に一喝され、二人は慌てて高橋に向き直る。
…お二人とも、私のことは気にしなくていいのに
慰めたいのか遊んでいるのかよく分からない二人。
その後の対応に困る言乃は一人首を傾げていた。
その間も高橋の話は進む。
「そしてそのゴム紐ですが、これも日奈山くんが庭の物置で発見した妙な紐、それがあのゴム紐と同じものだということがわかりました。普段、物置に鍵はかかってないようなので、ホシはそこから必要な分だけ持ち出したものと思われます」
「ああ、あの蛇ーって大騒ぎしたアレか」
「それは置いておこう、日奈山くん」
眼鏡を押し上げ、すぐさま話題を変える。
腰を抜かしたことには余程触れて欲しくないらしい。