空耳此方-ソラミミコナタ-
手繰る糸
「じゃあ…どこから行く?」
「つっても知ってるのはじいちゃんの世話したおばちゃんくらいじゃないか?」
「………あの人ぉ?」
「どしたん? なんかあった?」
食事を終えて三人が食堂を出ようとすると、反対に食事をしにきた朋恵と郁美の二人に出くわした。
「あら、またどこか行くの?」
「ああ、ちょっとな」
炯斗が軽く言うと、朋恵は小さく眉を吊り上げた。
「あんたたちって、なんか掴んでるような感じよね」
「え?」
恵がほんの少し身を引く。
その様を隣の郁美が捉えた。
「そうなんだね」
「別に、そういう訳じゃないさ」
「おじいちゃんの昔話の場所を見てみようってだけですよ!?」
明らかに恵の声が上ずった。
その拍子に一瞬炯斗が苦々しい表情を浮かべる。
朋恵は三人を見つめ、腕を組む。
「前の事件もそうだったけど、不思議よね。あんたたちは」
「そういえば、君は朋恵に調べものを頼んでいたよね」
逃げられない。
直感的に炯斗は思った。
流石、日常的に事件に関わっているだけあって鋭い。
かわしても切り込まれる。