空耳此方-ソラミミコナタ-
「確か10年くらい前だよね。鹿沢建設の社員が会社の金を横領して、それが原因で会社は倒産。大きな計画がおじゃんになったってやつ」
朋恵が相づちを打って続ける。
「そうそう。秘書が隠してて、実際にことが起こったのは15年くらい前よ。それで鹿沢はバックボーンを失って地位も失脚。一気に裏の人になっちゃったのよ」
炯斗の頭に、冷たい風が吹き抜けた。
15年前
克己の失脚
玲子の死
アズサの件
『金を掴まされた』
「なんか……きた」
「「え?」」
炯斗の言葉に、一同がハモる。
「いや、わかんない。わかんねーよ? でも、なんか繋がりそうな気がしてきた! ともちー、その件、もうちょい詳しくわかんね?」
朋恵はおもいっきり顔をしかめた。
また狸ジジイに頼らないといけないの……?
絶 対 い や !
そこから朋恵の決断は早かった。
「今からあるアドレスを教えるからそいつに聞いて」
「高橋さんじゃねーの?」
「高橋もこんな話、本部に問い合わせないと分からないわ。こいつが一番手っ取り早い」
「……ありがと」
なんだか激しく敵意をむき出しにされながら受けとる知らないアドレスを炯斗はまじまじと見た。
「この名前なんて読むんだ?」
「詳しいことは本人に聞いて!」
そう言って、郁美を連れて朋恵は逃げるように行ってしまった。