空耳此方-ソラミミコナタ-
言い方間違えた。
炯斗はそう直感した。
狸翠の沈黙が痛い。
何をやってんだと言わんばかりの言乃と恵の視線はさらに痛い。
痛みに耐えて、呼吸がし難い。
そろそろ耐えられなくなってきた頃、狸翠が口を開いた。
『朋恵が俺に頼めって言ったのか?』
「え? はい。そうッス」
『………』
何か聞こえた。
すごく小さい声だったが、『何で自分から来ないかなぁ』と。物悲しそうに。
「色々大変そうッスね」
『わかるか?』
「なんとなく」
『態度が反抗期から一向に変わらないんだよな。俺にだけ』
それで電話をあんなに嫌がったのか。
知らない朋恵の一面が垣間見えた気がして、炯斗はクスリと笑った。
『俺は寂しい親父だよ』
「いやせめて頼られてるっしょ?」
『………そうか?』
少し声が明るくなる。
炯斗は電話口で大きく頷いた。
見えてないはずだが、伝わったらしい。
向こうで狸翠はよし、と声を出した。
『まぁいい。貸しとして調べてやるよ。メールでいいか? その代わりすぐ送ってやる』
「マジすか!? あざっす!!」
炯斗はその場で深くお辞儀をした。
連絡について少し話してから、炯斗は電話を切った。