空耳此方-ソラミミコナタ-
大場が一息つくまで喋り続けること数十秒。
それは、大場の本性を初めて見る炯斗と言乃を呆然とさせるには十分だった。

「お、恐ろしく口が回る方ですね…」

「……ヤバいマシンガントークだなぁ」

「まだいい方よこれは……」


恵がげんなりと言えば、二人は限界まで目を丸くした。

そこへお茶を淹れた盆を持った大場が現れ、玄関の床に腰掛ける。

「さて、どしたんだい?」

話し役は、大場と会話したことのある恵に委ねられる。

「ご丁寧にどうもありがとうございます。実は、昔この辺りに住んでいた玲子さんについて何かご存知ですか?」

「玲ちゃんのことだって?」

大場は一瞬目を見開いた。

呼び方からすると友達だったのだろうか。
玲子は透と同い年なので、生きていれば大場とも近い。不思議はない。

彼方に景色をみるように、目を細める。

「そうね…美人でなかなか憧れだったわよ。よく言い寄られてたけどついに結婚はしなくってね…」

大場は、少し苦笑した。
肌寒い玄関で、お茶だけがゆらゆらと湯気をあげる。

「あんまり男に興味があるようには見えなかったし、しまいに養子を二人も迎えたもんだから周りも諦めたんさね」


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