空耳此方-ｿﾗﾐﾐｺﾅﾀ-

養子――アズサと、まだ把握してない人物、悟のことだろう。

「その養子というのは――」

「大場さんいる？ 漬物作ったからお裾分けしようかと……あら、お客さん？」


恵の質問を遮って入ってきたのはさらにオバサン。
大場と同じで、いかにも話好きそうでピンクのエプロンに漬物のビニール袋片手に微笑んだ。

「まあまあ、鈴木さん！ いつも美味しいのありがたいわぁ！ あ、この子たち、玲ちゃんについて聞きたいんだそうよ」

「玲ちゃん？ あのどこぞの会社に殺されちゃったみたいな？」

「そうその」

「あの、殺されたっていうのは……？」

恵がオバサンに割り込んでいくと、鈴木はパッと表情が変わる。

察した三人がすぐさま鈴木の場所を開けると、彼女はそこでオバサンの本能を、ハスキーな大場とは違うソプラノボイスで発揮し始めた。

「島の権利争いは知ってる？ あらいい子ね、それなら話は早いわ。

玲ちゃんが頑として権利を手放さないのをどうにか懐柔しようとね、会社だか政府だかの人がしょっちゅう玲ちゃんの家に交渉に来てたのよ。

その人たちがつまらないものですが、って持って来るものをいらないからって玲ちゃんからよくもらったものよ」