空耳此方-ソラミミコナタ-
あれ美味しかったわぁ、と呑気に笑う鈴木。
話し声もさながら、空気にもほんわかと小さい花が漂う。
思わずこの小さなオバサンにペースを持っていかれそう。
「あのお菓子とか高級品だったのにねぇ」
「そっちはいいですからお話を……」
「あらぁ、ごめんなさいね?
ええと……そうそう。
それで玲ちゃん大分まいってたみたいでね? あーちゃんが手伝っていたけど、正直見てられなかったわ。その頃はさっくんも本土で一人暮らしでしょ? 二人きりで大変だったでしょうに…。
大丈夫か、手助けしましょうかって聞いたんだけど、いいって言うしね。
思えば、案外強情な子だったわね……玲ちゃん」
悲しそうに目を伏せる鈴木。
冷めていい温度になったお茶をすすり、炯斗はお茶菓子に手を伸ばす。
「オバ…鈴木さんて、玲子さんと家近かったのか? なんか、家族みんなと仲よさげだけど」
「ええ、お隣であそこのうちの二人とうちの子で仲良くさせて頂いたわぁ。
あーちゃんは面倒見るのが上手くってね。さっくんはデザイナー目指すって高校は本土の東京の方に行ったりね」
「おお思い出話は、いいからさっ」
炯斗は慌てて話を元に戻す。
そして、少し、声を落ち着けてから言った。