空耳此方-ソラミミコナタ-

「じゃあ…鈴木さんは、玲子さんをやったのはアズサさんじゃないって思ってるんだな?」

「ええ、そうよ!」

鈴木はソプラノをさらに少し高めて、力強く頷いた。

「もちろんですとも! あーちゃんがやるもんですか! あんなに微笑ましい親子は滅多にありませんよ! そりゃ、警察のでっち上げを信じたお馬鹿さんもいるでしょうよ? けれども、あーちゃんがそんな子じゃないことは、お隣の私が保証します!」

「声たっけぇ……」

耳を押さえつけたいのを我慢して、キンキン声に耐えるのは大分キツイものがある。
気付けば、みんな鈴木から一歩引き、大場は鈴木のお茶をと奥に避難していた。


色んな意味で耳の痛い沈黙が降りると、大場は帰ってきて言った。

「あーちゃんもそうだけど、二人がいなくなってからのさっくんも可哀想だったね…」

「ずいぶん自分を責めてたものね……。それでも、しばらくして島に戻ってくれたのは驚いたわ。あのまま本土に残るのかと思っていたわ」

「でも、立ち直ってから私らによくしてくれたねぇ」

「ええ、この島のために。玲ちゃんやあーちゃんのために……あっ!」

鈴木は突然声を上げ、大場を見た。


< 318 / 374 >

この作品をシェア

pagetop