空耳此方-ソラミミコナタ-

大場も、どこかハッとして少し青ざめる。

鈴木は突然立ち上がり、オロオロとし始めた。

「ず、ずいぶん話し込んじゃったわね! まだ夕飯の買い物行ってないわ! お漬物ここに置いておくわね! じゃあ大場さんまたね!」

そう言って鈴木は、漬物の残り香だけ残してそそくさと出て行ってしまった。

「どうしたんだ?」

「さぁ……?」

三人は顔を見合せた。
その横で、大場は小さくため息をついた。

「もう聞くことはないかい?」

有無を言わせないような厳しさがあった。

「あ、ああ…」

「ご馳走さまでした」

三人はお礼を言って大場の家を出た。
なんとなく後味の悪い訪問だった。

「なんだったんだろ?」

【わかりません。何か悪いことでもお聞きしてしまったのでしょうか?】

「なんか…隠してるふうだよな」

うん…と頷く。
しかし島民が炯斗たちに秘密にする内容も理由も心当たりがない。

「とりあえず、他をあたるか」

「そうだね」


< 319 / 374 >

この作品をシェア

pagetop