空耳此方-ソラミミコナタ-
大場も、どこかハッとして少し青ざめる。
鈴木は突然立ち上がり、オロオロとし始めた。
「ず、ずいぶん話し込んじゃったわね! まだ夕飯の買い物行ってないわ! お漬物ここに置いておくわね! じゃあ大場さんまたね!」
そう言って鈴木は、漬物の残り香だけ残してそそくさと出て行ってしまった。
「どうしたんだ?」
「さぁ……?」
三人は顔を見合せた。
その横で、大場は小さくため息をついた。
「もう聞くことはないかい?」
有無を言わせないような厳しさがあった。
「あ、ああ…」
「ご馳走さまでした」
三人はお礼を言って大場の家を出た。
なんとなく後味の悪い訪問だった。
「なんだったんだろ?」
【わかりません。何か悪いことでもお聞きしてしまったのでしょうか?】
「なんか…隠してるふうだよな」
うん…と頷く。
しかし島民が炯斗たちに秘密にする内容も理由も心当たりがない。
「とりあえず、他をあたるか」
「そうだね」