空耳此方-ソラミミコナタ-
しばらくして見つかった通行人は手応えなし。
行くあてもない三人。



例の羽田作の素晴らしい地図で花守荘から一番近い農家を探し、言乃の要望のみかん農家を尋ねることにした。

農家を営むのは親子。
しわくちゃの老夫婦とその息子夫婦のよう。

声を掛けて話を聞きたいと言ったとたん、人懐っこい笑みを浮かべたお婆さんに座敷まで引っ張り込まれた。

お茶が出て来れば、お茶菓子もみかんも出てくる。


そこまで食べたかったのか知らないが、すぐさまみかんに手を伸ばし、皮をむく言乃。

「んっ! さすがに都内で買ったのと違って袋が柔らかいですよ!」

「ああ、そう……」


もう何処から突っ込んだらいいんだろうか…

あきれる二人をよそに、言乃は嬉しそうにみかんを口に放った。

「さて、何のお話だったかな?」

お爺さんが座敷にやってきて、問いかけた。
お婆さんは切ったリンゴを持って遅れてでて来る。

しばらく世間話をしてから、恵がおずおずと本題に入った。

「昔、この辺りにいた玲子さんて方のお話を聞きたいんですが……」


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