空耳此方-ソラミミコナタ-
しかし、老夫婦は大した付き合いもなかった模様で、目新しい情報は入手出来なかった。
突然上がり込んだ上に、何も収穫はなしでは二人に悪い。
苦しくなってきた恵の助け船をだすように炯斗は話の方針を変えた。
「なあ、何日か前に事件があっただろ? それについては何か知らないか? こう……スゴく小さいことでもいいから。いつもと違ったこととか」
「違ったこと?」
老夫婦は顔を見合せた。
「そうね…何かあったかい?」
「さあな?」
……ダメか。
首を傾げる二人を見て、炯斗は内心でがっかりとする。
どう見ても八十はくだらないじいさんばあさんだ。
翌日でもない限りはもう――
「ああ、婆さん。あの日じゃないか? 車がよく行った日」
「ああ……そうでしたね! なんだか煩くてね」
お爺さんの話に、お婆さんも手を叩いた。
夫婦のテンションの上がりように身を乗り出す炯斗。
「うるさい車? 詳しく教えて!」
しかし、お爺さんは腕を組んで唸る。
「大した話じゃあないんだが…車がうちの前を何回も通ったというだけなんだ」
「狭い島だからね、ここは車なんてほとんどないでしょう? だから目立つのよね。そういう音」
「なるほどな……」