空耳此方-ソラミミコナタ-


農家を出て三人は、またぷらぷらと歩いていた。

「あの話にあった車ってなんだろう?」

恵が農家の方を振り向きながら言う。

【考えられるのは2つですね。あの日、克己さんをロープウェイまで運んだ車と、火事を聞き付けてやってきた車です】

「けど火事で来た消防車は一台だけだったぜ」

「となると克己さんを……」

暗い車内にぐったりした克己が運びこまれる様子を想像してしまい、恵は身震いをする。

歩いているうちに、島の端の草原に差し掛かる。
そのまま歩きつつ、炯斗が頭をかきながら言った。

「じゃあよ、当日の犯人の行動を整理すると……犯人はまず克己さんの意識を失わせて、車に運ぶ。んでもって火事を起こしてロープウェイへGo!」

【その時、中庭で樋山さんに逃走する背中を目撃されています】

「んだな。で、後はロープウェイがどうにか谷へ処理してくれたと」

「……お前たち、探偵の真似事なぞやっているのか」

顔を上げると、ボサボサとしたスタイルの樋山が少し先に座っていた。

「どうも」

「……ま、いいじゃん。知りたいって気持ちは大事だぜ?」


< 322 / 374 >

この作品をシェア

pagetop