空耳此方-ソラミミコナタ-

「……」

沈黙。

「なぁ!! 無理! 俺こういうの堪えらんない!!」
だだっ子のように叫んだらそのままジャンプ。

「あ! ダイブしないで、そこ私のベッドだってば!」

「知らね。もう飛び込んだ」

「あーあ、布団ぐしゃぐしゃ」

『…どんまい』

ポンと肩に手を置かれるがアズサは幽霊。
感覚もないその薄っぺらい同情に恵は大きなため息を吐き出した。

「炯斗くん。ポケットから何か落ちましたよ」

「ん? ああ、暗号だ」

『……それは』

炯斗が紙を拾い上げるとアズサの目がすっと細まる。
小さなメモを広げて、アズサに見せる。

「玲子さんの作ったやつだよ。何か聞いてない? これ全然わかんないんだけど」

『……わからない。聞いたことない』

「そっか……」

炯斗はガックリと肩を落とす。

「でも、そう悲観することもありませんよ」

「そうだよ! 樋山さんが教えてくれたヒントがあるじゃない」

言乃と恵の言葉で、ちょっと肩を起こす。その脇で、アズサは首をひねる。

『樋山さん?』

「ええ。樋山朝隆さんといって、ミステリー好きの不思議な方です」

『……へぇ』

「意外と反応薄いね」


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