空耳此方-ソラミミコナタ-
言乃が語る内容は炯斗にとって衝撃的だった。
しかし、彼女の推理をも含めると、すべては繋がる。
それでも、炯斗には信じがたい話であり、それは恵も同じだと青い顔が物語る。
「……そんな、嘘だろ…」
「ですが……動機も、犯行のチャンスも死体のトリックすらも…あの人なら、可能です。
ただ……足りないんです。人が」
アズサは変わらずぼんやりとしているように見えるが、普段よりさらに青白い。
「………」
重い沈黙。
これでは、騒ぎだす者もいない。
「………」
「…わかりました、解読の法則。ちょっと待ってて下さい」
言乃は紙とペンを取り出して、手を動かし始めた。
見たところ、方法はアナグラムでも置換法でも『タヌキ』でもない。
アナグラムじゃないのか…樋山さん、残念だったな…
せっかく教えてもらったのに、それではなんだかもったいない気がしてくる。
名前とかで出来ねーかなぁ…まずは…
頭の中で人の名前を浮かべて、バラバラにして並び替えてみる。
しばらく遊んである時、炯斗の背中に冷たいものが伝った。
……!!
……まさか…
否定しても、一度動き出した思考は滑らかに進む。
障害になるものは何一つなく、一つの答えにたどり着く。