空耳此方-ソラミミコナタ-
「俺、わかった……」
「え?」
二人が顔を上げると、炯斗は確かめるように何度も頷いて
「わかったんだ! そのことのんの推理に足りないもの!」
「嘘!?」
「へへ……マジで」
不敵にわらって見せる炯斗。
その時、言乃の手が止まった。
「……終わり…ました…」
なぜだか、言乃の声と目は、ひどく揺れていた。
どれどれ…と覗き込む二人は、すぐに大きく目を見開き、我慢出来なくなった恵の瞳から、雫がこぼれた。
「そんな……そんなの…悲し過ぎるよ…!!」
「きっと、解読出来なかったんでしょうね…」
「ああ。知ってたら、こんな事件起こるはずがねぇよ……」
幾度目かの沈黙が落ちた。
「……高橋さんに連絡しなきゃな…」
炯斗はノロノロと携帯に手を伸ばす。
「……明日です。明日で、すべて片付けましょう」
「うん」
皆の動き、全てに機敏さがない。
旅の疲れは、もうピークに達しようとしている。
しかし――明日全ての幕を降ろす―――その思いだけはしっかり胸に、刻まれていた。