空耳此方-ソラミミコナタ-
遺志のすれ違い
翌日
昼前のガランとした食堂は、人気がないはず。
しかしこの日だけは、普段と様子を異にしていた。
洗い物の音が響く厨房から一番遠い一角を何人かが陣取り、座っている。
何を待っているのか、座る人々は、落ち着かない様子で互いの顔を見合わせる。
しかし、世間話が出来るほどの仲の人間はすくなく、またそんなことが出来る雰囲気ですらない。
鹿沢克己を殺害した犯人が判明した――そう伝えられて集められた高橋、朋恵、郁美、透、樋山。
そして、何故か村長。
彼らが全員そろったところで、金の長身が姿を現した。
「揃ったみたいだな」
「そう? 役者が足りないような気がするけど」
朋恵の言葉の通り、この場には言乃と恵、そして羽田がいない。
だが、炯斗はゆっくりと首を振った。
「いいんだ。日課は邪魔しちゃ悪いし、あっちはあっちでやってるからさ」
「それはどういう――」
「そんなことより……まだ始まらないのか」
話を遮られ、朋恵は樋山をキッと睨む。
険悪なムードに、先がどうも不安だ。
小さくため息をついて、炯斗は語り出した。